<TAK JAE HOON>
<絶版>
1995.7

 タク・チェフンはデビュー当時、Roo'Raの前座をしていたことがある。Roo'Raが「ナゲ イルン チョンサ」で人気の頂点を極めていた時期のことだ。ビデオにもなった95年のライブ(ゲストに入隊中のシン・ジョンファンが登場するもの)の前座がすなわち彼の初舞台だったという。後に相方となるシン・ジョンファンは、彼がアルバム準備に入るのとほぼ時を同じくしてグループを抜けていた。その「ナゲ イルン チョンサ」を作曲したチェ・ジュニョンがプロデュースしたのがこのアルバム。
 当時の韓国マスコミのタク・チェフン評の殆どは「長渕剛に似ている」だったが、「ノエゲ ナル」の一部にやや痕跡があるかな、くらいで大して似てるところは無いと思う。

 全体的に共通している点は、どの曲もメロディラインがいいこと。彼のはっきりとした声質によく合っていること。たいへん耳触りが良くなじみやすい曲ばかりなのだが、ある意味ではそれが失敗の一因だったのかもしれない。当時はレゲエブームが一段落して、BPMの速さを競うように激しいダンス曲が押し寄せるように出ていた時だった。代表的なヒット曲がキム・ゴンモ「チャルモットェン マンナム」である。同期デビューのイム・チャンジョンなども全く出てくる隙がなかったものだ。

 人はこのアルバムをして彼に「ロックシンガー」の呼称を与えた。そしてそれは、非常に韓国的にロックを捉えた上での呼称でもある。バラードの演奏にギターが使用されていれば、すなわちそれが「ロックバラード」なのだから。
 現在、このアルバムはまず手に入らないようなので(運が良ければ韓国内でゲットできるらしい)、簡単に聴いてくださいとは言えないが、ひとりの青年の、チャンスに賭ける力強さのようなものも感じられる、若いけれどいい作品である。

(2000年記述)